はてな
- 「読書は好きなのに、国語のテストの点数はあまり良くない」
- 「算数の問題文の意味がよくわからない」
- 「テストで何を聞かれて、何を答えればいいかわからない」
多くの子供が直面している悩みではないでしょうか。そもそも「読解力」とは何か。どうすれば「読解力」は上がるのか。
本記事では、『AIに負けない子供を育てる』(新井紀子)に記載されている内容と、私の国語教師としての経験を交えてお伝えします!
日本人の「読解力」低下中

2015年度のPISAの結果では、日本の読解力は516点。前回と比べて22点、下がっています。OECD加盟国中の順位も、1位から6位に転落しました。そのため、子どもの読解力の低下が問題視されています。
「読書」をしても「読解力」は伸びない!?

「読書」で得られるもの「語彙力」「識字力」「速読力」「類推力」
小さい頃から、本をたくさん読んでいる子は、「読解力」高いんじゃない?
間違いじゃないけど、正解でもない。
確かに、読書をたくさんする子は、前後の文から言葉を「類推」する力、速く「読む」力は高いっていう実感です。
特に「類推力」はすごい。「大体こんな感じの意味ですよね?」っていう会話が成り立ちます。
読書習慣がないと、意味がわからない語が出てきた瞬間、「内容さっぱりー」になったり、読む気がなくなったり。
そういう意味で、上に書いた「力」は、「読書」でつけることができると思います。
じゃあ、読書習慣があれば、国語の力は高いんじゃん!
ところがどっこい、そうじゃない。
読書量は他の人の10倍、国語のテストは平均以下。こんなことは当たり前。
つまり、言葉や文章を正確に読み解く力「読解力」と、「読書量」は直結しないんです。
じゃあ「読解力」ってなんなのよ!!
「読解力」ってなに??
自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力
OECD(経済協力開発機構)「PISA(Programme for International Student Assessment)」
このように定義されています。まとめると次の通りです。
読解力って?
- 文章(教科書・教材)を読んで、正しく理解できる力
- 文章(教科書・教材)の意味を熟考できる力
- 文章(教科書・教材)に基づいて自分の意見を論じられる力
教科書や教材を「正確に読む力」のことを指します。
内容を、正確に理解する&意見を論じる力「読解力」ということ。
でも、それなら本をたくさん読んだ分だけ、身につきそうじゃん!
そう思いますよね。
それがなかなかつきにくいんです。その理由を次にまとめました!
なぜ「読書」で「読解力」は伸びない?
ズバリ「自己流の読み癖がついてしまっているから」。
読書した後に、他者と感想を交流したり、意見を言ったりする機会ってほとんどないですよね。あったとしても「主人公〇〇だったね」とか「あの場面やばかったね、感動した」とか。なかなか本を開きながら「ここにこの言葉があって、、、」「最初はこの表現だったのが最後にはこの表現になってて、、、」みたいに語り合うことはないと思います。
つまり、「自分勝手に解釈して、それで満足してしまう」傾向にあります。言葉一つ一つに注目して読むことができないんです。注意して読まなくてもあらかたの内容がわかったように感じますからね。
じゃあ、どんな間違いが発生してしまうのか。
「多読者」の誤答パターン① 「根拠なき解答」

問題:「父から手紙が届いたときの主人公の気持ちを三十字以内で書きなさい。」
よくある形ですね。心情を問う問題です。これに対してよくある誤答が「思い込み解答」です。
こういう「心情」を問う問題によくあるのが、「根拠なき解答」。
父から来た手紙だったら、嬉しいに違いないな!!
極端に書きましたが、こんな感じで、前後の文章をしっかり読み込まず(読み込めず?)に、解答してしまう。これが「根拠なき解答」です。
おそらく前後には、「手紙」に関する情報がたくさんあるはず。
深く読む
- 父からの何通目の手紙?
- 封筒に入ってた?
- どんな字?
- もらった時の主人公の行動は?
- もらってすぐ読んだ?後から読んだ?
- それまでの父との関係は?
文章に書かれた情報を、素早く、正確に読み取って、書く力が「読解力」になるんです!
多読者に多い誤答パターン② 「問いの意味がわからない」
偏差値70、休み時間にはひたすら読書をする中学生の話。
国語のテストでも、点数は取れる、けどもなんか点数が安定しない。「そこ?」っていうところで間違える。そんな子から、ふとした時に質問が来ました。
「設問(問い)の意味がわかりません。」
生徒がつまづいていたのは「言い換え問題」。つまり「「○○○○」と筆者は述べているが、これはどういうことか」
なるほど。そこでつまづいたりもするんだ。
この手の問題は、「具体」と「抽象」の言い換えが多い。「あ!言い換えればいいんだ!」というのを、問題文を読んで判断できる力、これも「読解力」の一つでしょう。
RSTテスト(リーディング・スキル・テスト)

なんとなく「読解力」がわかってきたぞ!
でも、自分に「読解力」があるか知る方法ないのかな?
自分の読解力を測定するテストがこちら「RSTテスト」です。実際に受験する場合には、受検料が発生しますが、詳細を知りたい方はこちらをクリックしてください。
具体的にどのような問題が出題されているのか、次の問題を解いてみてください。
例題1 (同義文判定)
次の二つの文は「同じ意味」か、「違う意味」か答えなさい。
「誰もが、誰かをねたんでいる。」
「誰もが、誰かからねたまれている。」
『AIに負けない子どもを育てる』より引用
正解は「違う意味」ですよね。なんと正答率半分以下の問題なんです。
例題2 (係り受け解析)
色やにおいで引き付けられた動物は、おしべの花粉を体をつけ、別の花のめしべへと運び、植物の受粉を助ける。
問:( )に当てはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。
植物の受粉を助けるのは( )である。
①花粉 ②動物 ③おしべ ④めしべ
同上
答えは「②」です。いかがでしたか?難易度が低い2問を載せてみました。こんな感じの問題を解き、「読解力」を判定していきます。

2018年の調査では、「半数以上の生徒が問題文を読めていない」という結果が出たそうです。
『AIに負けない子どもを育てる』の本の中には、RSTテスト体験版もあります。読解力についての解説も載っていますので、気になる方はご一読ください。小学校教員の方は本著の最後に、各学年ごとの「身につけさせたい力」が一覧としてのているので、読んで損はしないかと思います。
AIに負けない子どもを育てる「みんな違ってみんないい」の考え方を変えよう!
「文章の読解」は、「みんな違ってみんないい」なんて言っている場合じゃありません。違っていいのは、その後の「解釈」のとこ!
【間違いの「みんな違ってみんないい」】

これでは「正しく読む」ことができていません。間違った読みをしていてもOKということになってしまいます。
みんな違ってみんなよくありません。
【正しい「みんな違ってみんないい」】

まずは、「みんな」で同じ「正しい読解」をする必要があります。「同じ文章」を全員「正しく読む」。
正しく読めた後の「解釈」や「感想」は人それぞれでいいんです。
この感覚があると、「国語は答えがない」というのは間違いだし、もっと深い国語の授業ができるはず!
まとめ
「読解力」は簡単に測定できるものでもないので、成長させにくい力でもあると思います。
しかし、この力は国語だけに限らず、そのほかの教科、社会に出た後のメールのやり取り、レジュメ作成、プレゼン発表など、必ず必要になる力です。
現在の国語の授業が、「読解力」を高めるものではなく、「文学」の読み取りがメインになってしまっているという現状も否定できません。
ただ、時代が流れても、正しく読み取って正しく伝えることの大切さは不変です!
アイデア授業
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