「どもり」「チック」「吃音」。よく聞く言葉ではあるけど、実際にどんな症状で、どんな対応が考えられるのか。
本記事では『吃音 伝えられないもどかしさ』を参考に、「吃音」の種類や特徴についてまとめ、紹介します。
そもそも「吃音」って何?
言葉につまること、すなわちどもることを「吃音」という。
『吃音 伝えられないもどかしさ』近藤雄生
幼少期の子供の20人に1人、約5%が「吃音」を発症すると言われています。
その多くは成長とともに消えていきますが、それでも100人に1人(1%)、日本では約100万人が吃音を抱えているということ。
子供20人に1人と言うと、1クラスに平均で2人、話すことが困難な子供がいると言うことなので、決して珍しいものじゃないということが分かりますね。
3種類の「吃音」
- 「連発」:「わ、わ、わ、わ、私は・・・」
- 「伸発」:「わーーーたしは」
- 「難発」:「・・・・・(わ)たしは」
1文字めを何度も発音してしまう「連発」に始まり、「難発」では、1文字めが発音できない状態。
「連発」→「伸発」→「難発」の順に症状が進行した状態です。
「吃音」の2つの特徴
- 曖昧さ
- 他者が介在する障害

わからないことだらけ、なのが「吃音」の大きな特徴の一つ。
そもそも治るのか治らないのかそれすら現時点ではわかっていません。「曖昧さ」に関しては、今後の研究で解明されていくかもしれませんね。
しかしそう簡単に解決できないのが2つ目の特徴「他者が介在する障害」だということ。
こればっかりはどうしようもありません。
「吃音」はそもそも「他者とのコミュニケーション」の中で生じるものであり、他者にどう思われるか、その恐怖心や羞恥心からくるものだからです。
「吃音」の位置付け〜「吃音」って病気?

「その他」に位置しているのは「治療法」が不明確だから、と言うことらしい。
日本ではこのWHOの位置づけに基づいて、「吃音」を「精神障害の一つ」と判断しています。
「身体障害」ではない、と言うのが微妙。
なぜなら、「身体障害者手帳」は【更新不要】となる可能性がある一方、「精神障害者保健福祉手帳」は【二年更新】だからです。
これの問題点は「雇用する側」。更新が必要な「精神障害」だと、雇用しにくい現状があるらしいです。
「吃音」は治るのか
結論「わからない」。
本書には何人もの吃音を抱えた人々が登場しますが、完全に「治った!」という人は登場しません。
ただ長期間にわたる「トレーニング」の末、「改善」した人は登場します。
「治る」かどうかすらわからない、そうすると「改善」を目指す根気を維持するのも難しくなりますよね。
「吃音」を抱えた人と、どう対面するべきか
- 大きく相槌を打つ
- 急かさない
- 自然な態度でいる
本書に「吃音」を抱えた方との接し方が、書かれているわけではありません。
が、登場する当事者の言葉などから、この3つの態度は少なくとも大切なのではないか、と思うものをまとめました。
「焦り」「恐怖」「羞恥」
そういう負の感情が、吃音を抱えた人の会話には含まれています。
「私はあなたの話を聞いています。自分のペースで話してください」
その姿勢を示すことが、周囲(家族、友人、同僚)の人の最低限の役割ではないでしょうか。
言語聴覚士の助けを借りて
言語聴覚士はことばによるコミュニケーションに問題がある方に専門的サービスを提供し、自分らしい生活を構築できるよう支援する専門職です。
一般社団法人 日本言語聴覚士協会
「吃音」の改善や治療に欠かせない存在となるのが、言語聴覚士。
本書には言語聴覚士の羽佐田竜二さんが登場し、吃音改善のトレーニングを行なっています。
吃音者がその困難から解放されるのであれば、ぼくは魔法でも薬でもいいと思っています。たとえ何か立派な理論があったとしても、変われないのであれば無意味です。目の前にいる人が変われるかどうか。自分にとって大事なものはそれしかないんです。
『吃音 伝えられないもどかしさ』近藤雄生
羽佐田さんの印象的な言葉です。
吃音が治るかどうか、苦しみから解放されるかどうか、それだけに焦点を当てて、真正面から人と向き合っています。
羽佐田さんは現在【特定非営利活動法人 つばさ吃音相談室】の理事長を務めています。
吃音を抱えた有名人
マリリン・モンロー

言葉を発するのが辛いの。体を見せるだけならずっと楽。
『吃音 伝えられないもどかしさ』(近藤雄生)
セックスシンボルともされたマリリンモンロー。実は幼少期の頃から「吃音」に悩まされていたそうです。
36歳で亡くなったマリリンモンローは、死の直前は精神的にかなり不安定な状態でした。
それも「吃音」が影響していたのでしょうか。
メーガン・ワシントン
オーストラリアのミュージシャンであるメーガン・ワシントンさんも吃音を抱えています。
TEDの中で、他者とのコミュニケーションの苦悩を赤裸々に語っています。
メーガンさんは「S」と「T」の発音が苦手。それはこのTEDを見ているとよく分かります。
メーガンさんのように特定の「音」の発音が苦手という人も多いといいます。
しかし、メーガンさんが全くどもらないのが「歌」。好きな歌を歌うときには一切どもらないんです。
どういうわけか、人間の脳の奇跡的なシナプスの機能を通して、歌うときに吃音が出ることはないのです。
TED メーガン・ワシントン「なぜ人前で話す恐怖の中で生き続けるのか」
歌うことは私にとって優しい慰めです。歌っている時だけは流暢になれる気がします。その時だけは自分の口から出た言葉が徹底的に自分の言いたいことそのものになります。
TED メーガン・ワシントン「なぜ人前で話す恐怖の中で生き続けるのか」
どもりながら自分の吃音について話すメーガンさん、しかし歌い始めたその姿は正直別人。
「奇跡」の瞬間を見ているかのようです。
終わりに
私たちに求められていること
私たち一人ひとりが、他人に理解されづらい障害や問題を抱えて生きる困難さや、「みなができることをなぜ自分はできないのか」という、誰にでもあり得る思いへの想像力を、少しでも広げていこうと意識することが重要であろうと思う。
『吃音 伝えられないもどかしさ』(近藤雄生)
「吃音」を抱える100万人の思い
「残り、時間が・・・少ないから、こそ、私は、訓練をしたいんです。死ぬ、までに、どうしても、思うように、話すという経験、を、してみたいの、です。
『吃音 伝えられないもどかしさ』(近藤雄生)
「吃音」当事者について詳しく知りたい方は、ぜひ手に取ってお読みください。